庭師の仕事
~植物は生きている~
植物はじっと黙って、その場所で生きている。
風雪に耐え、人間たちの汚した空気を吸いながらも、じっとそこで生きている。
挙句にズタズタに切られても、引っこ抜かれて狭い庭という空間に無理やり押し込まれても、じっと耐えている。
我々動物は、泣いたり、わめいたり、怒ったりと、自分で訴えることができる。しかし、植物は生きているのに、じっと我慢するしかないのである。
私は、植物が動物より劣っているとは思わない。じっと黙って、与えられた環境に身を置いて一生を全うする植物は、尊敬するに値するのではないか。むしろ、抵抗できない植物を自分の都合でいいように扱っている人間こそが思い上がっているのではないだろうか?
~植物本来の姿~
自然が好きなら、森や山や林に行けばよい。そこには、本来あるべき姿で木や草が嬉しそうに息づいているのである。
何も狭い庭に持ち込んでこなくても良いのだ。
森の木々の枝は、成長するたびに自然に淘汰され、見事な枝ぶりとなり、空へ空へと葉をまんべんなく広げるのである。そしてそこから漏れる光と落葉のフワフワの布団の上で、草々は可憐な花を咲かせるのである。
植物は、自分達で生態系を作り、成長していく術をしっかり身につけているのである。
~共に生きる~
人間は、実にもろい動物である。頭脳が発達したゆえに、悩み、苦しみ、悲しみが絶えない。そこで救いや癒しを求めたくなる。その一つの手段として自然の木々や草花を生活に取り入れ、心安らぐ空間を造ること、それが庭ということになるのであろう。あくまでも人間から見た一方的で勝手な考えではあるが。
我々は食べる時、「いただきます」と言う。これは生き物の命を頂くという考え方もある。私は庭に植物を植えるという行為は、まさに、草木たちの命を頂くということになるのではないだろうか。従って、「感謝」と言う言葉は、常に忘れてはならないと思うのである。
~庭師の仕事~
私は、「なぜ庭師が必要なのか?」と問われたら、迷わずこう答えたい。
「植物たちにできるだけ本来の姿で居てもらいたい。けれど、限られた空間、すなわち庭の中では伸び放題にはさせてもらえない。自分ではどうすることもできないのだ。そこで、手助けしてやる、いや、手助けさせてもらうのが庭師の仕事である」・・・と。
声を出すことができない植物たちに耳を傾け、人間と植物が共存するための落とし所を見つけながら最善を尽くすのが、庭師の仕事ではないだろうか。
庭師塙 聡
プロフィール
代表 | 塙 聡 |
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経歴 |
千葉大園芸学部 園芸別科造園専攻修了 (株)タナカ築庭(水戸)入社 田中正三氏に師事 27歳で独立 ハナワガーデン代表となる |
主な資格 |
一級造園技能士(国家試験) 一級造園施工管理技士(国家試験) 職業訓練指導員(造園科、知事認可) |
趣味・特技 | 華道 27歳より峰仙流家元 浦井峰仙氏に師事 書道 師範格 剣道 30代後半から本格的に始め、現在六段 骨董収集(生活雑器や壺などの焼き物) |
家族 | 妻と4人の子(2男2女)をもつ |
スタッフ紹介
塙 良子 事務・経理、管理栄養士・健康運動指導士 料理 近茶流教授の小澤侑子氏に師事 「居食同源の部屋」を担当 |